野球肘の1つOCDとは?

カラダ

〜上腕骨小頭離断性骨軟骨炎と早期対応の重要性〜

「最近、子どもが肘を気にしているけど、大丈夫かな…」
「無理はさせていないつもりだったのに、検査で異常が見つかってしまった…」

そんな不安を感じたことがある保護者の方、また選手を支える指導者の方に、ぜひ知っておいてほしいのが上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(じょうわんこつしょうとうりだんせいこつなんこつえん)(略してOCD)という障害です。

これは特に成長期の野球選手に稀に見られる肘のトラブルで、早期に発見して対応すれば、競技を諦めることなく回復できる可能性があります。

 

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎とは?

上腕骨小頭とは、肘の外側にある骨の一部で、この部分に繰り返し負荷がかかることで骨と軟骨が損傷し、はがれてしまう状態を上腕骨小頭離断性骨軟骨炎と呼びます。

特に多く発症するのは10〜12歳ごろの少年野球選手で、ピッチャーに限らず、野手にも見られます。日本の研究では2〜3%の発症率(100人の内2~3人)があるとされ、決して珍しい病気ではありません。

初期には自覚症状が少ないことも多く、発見が遅れると、軟骨や骨がはがれて関節に浮いてしまい、手術が必要になるケースもあるため注意が必要です。

 

早期発見・早期治療で救える未来

この病気は、早期に発見し、保存療法(ほぞんりょうほう)=安静とリハビリを適切に行えば、手術せずに回復できる可能性が高いことが分かっています。

2023年に発表された日本肘関節学会の研究では、初期に診断された41人の選手のうち、およそ6割が保存療法だけで野球に復帰できました。

これは非常に希望のある数字です。

加えて、この研究では「集束型体外衝撃波(しゅうそくがたたいがいしょうげきは)療法(FSW)」という治療法を併用したグループの方が、回復までの期間が短縮されたことも報告されています。

 

小さな変化に早く気づくことがカギ

次のような変化が見られた場合は、すぐに整形外科での検査をおすすめします。

  • 投球後に肘の外側がだるい・違和感がある
  • キャッチボール中に球が抜ける感覚がある
  • 投球フォームが崩れてきた
  • 肘が完全に曲がらない、伸びない
  • 冷やしても痛みが引かない

これらは初期のサインである可能性があり、早期にレントゲンやエコー検査を受けることで、重大なトラブルを未然に防ぐことができます。

 

治療は長期戦。でも焦りは禁物

保存療法の中心は「とにかく肘を休ませること」です。
これには少なくとも6か月、場合によっては1年近くの安静期間が必要となることもあります。

この間、肘だけでなく、体全体の柔軟性や投球フォーム、体の使い方を見直すことで再発防止にもつながります。

復帰を急いでしまうと、再発や悪化のリスクが高まり、結果として選手生命を縮めてしまう可能性もあります。

 

集束型体外衝撃波(しゅうそくがたたいがいしょうげきは)療法(FSW)とは?

集束型体外衝撃波とは、特殊な装置から体の外から衝撃波を送り、骨や軟骨の回復を促す治療法です。

海外では整形外科分野で広く使われており、日本でもスポーツ選手を中心に注目が集まっています。

 

研究では、集束型体外衝撃波を取り入れた選手の方が回復期間が短く、より早く投球を再開できたという結果も出ています。

ただし、現時点では保険適用外のため費用がかかること、対応できる医療機関が限られている点には注意が必要です。

 

保護者・指導者ができること

✅ いつもと違う様子を見逃さない

選手が「痛い」と言い出すのは、実はかなり我慢した後のことが多いです。
普段から「肘の調子どう?」と声をかけるだけで、異変を早くキャッチできます。

✅ 投球数と登板間隔の管理を

特に中学硬式などでは、休ませる勇気が非常に大切です。
勝ちたい気持ちは分かりますが、選手の体は取り替えがききません

✅ 正しい情報の共有

この病気は、「知っていれば防げた」ケースが多いです。
チーム全体で正しい知識を共有することで、大切な選手の未来を守ることができます。

 

最後に…選手の一番の願いは「野球を続けること」

けがでプレーできない悔しさ、仲間と一緒に練習できない辛さ…。
本人が一番つらい思いをしていることを、私たちは忘れてはいけません。

早期発見・早期治療こそが、子どもたちの野球人生を守るカギです。
私たち大人が正しい知識と対応を持って、選手を支えていきましょう。

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