肩関節脱臼とは
何らかの原因で上腕骨が肩甲骨から外れてしまった状態のことを指しています。
よく聞く言葉に亜脱臼がありますが、脱臼は関節が完全に外れてしまった状態を示し、亜脱臼は部分的に外れてしまった状態のことを指します。
原因
ほとんどが転倒や衝突等による大きな外力が肩に加わった時に生じます。
野球である場面は…
- 内野手が逆シングルでボールを捕球しに行った時のグローブ側の肩関節の脱臼
- 投手がボールを投げた時に投球側の脱臼
- 投手の投げたボールが高めに抜けた時に捕手が腕を伸ばして捕球する時のグローブ側の脱臼
等があります。
治療の考え方
まずは医師による整復が行われます。
時々、自然と肩が整復される場合もありますが、基本的には無理矢理に肩をはめようとしてはいけません。
必要以上に関節を損傷することや、上腕骨の骨折を伴う場合があります。
グラウンドで肩関節の脱臼が起きた場合は三角巾で吊るすか、痛みが少ない姿勢で固定して病院まで行く様にしましょう。
医師の診察によりその後の対応方法が異なりますが、ざっくりとした流れは三角巾で数週間(約3~4週間)の固定期間を過ごしてから、リハビリを行うことが多いです。
レントゲン等の画像診断によって手術が必要な場合もあるので、主治医の指示に従って治療を進めていきましょう。
とある調査では、肩関節を脱臼して手術療法をせずにスポーツへ復帰出来たのは、24名中13名で、3~6ヶ月でスポーツ復帰目標としています。
しかしこの調査で含まれる野球選手は3名で全例、投球側の脱臼である為、解釈には注意が必要ですが、非投球側(グローブ側)の脱臼であればもう少し早く復帰出来るかもしれません。
リハビリの考え方
医師からリハビリの許可が出てから行います。
私が考えるポイントは肩甲骨の可動域の獲得と肩関節周囲筋の強化です。
肩甲骨は肩関節の可動域を広げる為には必ず必要である為、肩甲骨の可動域を拡大出来るような運動を指導するようにしています。
肩関節周囲筋というのは、一般的に知られているインナーマッスルを中心とした筋肉です。
特に肩関節の前面にある肩甲下筋(けんこうかきん)の強化は必須であると考えているので、肩甲下筋を鍛える運動を指導していきます。
肩関節の可動域が広がってきたら、実際の野球の動作を行っていき、不安感のある動作が無いかをチェックしていきます。
特に脱臼をした動きは不安感を感じやすい為、慎重にチェックをしていきましょう!
関連文献
1)青柳孝彦; 鶴田敏幸; 小峯光徳. 若年スポーツ選手の肩関節初回脱臼例に対する保存療法と 手術療法による機能回復の差異. 肩関節, 2012, 36.2: 337-341.
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